【書籍】『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ(著)〜人類の歴史を一気に知るには丁度いい〜

最終更新: 2019年9月4日



ここ2、3年で読んだ本の中でも特におもしろかったのが、ユヴァル・ノア・ハラリ(著)の『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福(上・下)』です。


ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)はイスラエル人の歴史学者&哲学者で、オックスフォード大学にて博士号を取得した後、2019年現在はエルサレムのヘブライ大学にて歴史学を教えています。大学院での専攻は中世史と軍事史で、それに関する著書も出版されています。


この『サピエンス全史』はタイトルの通り、私たちホモ・サピエンスが誕生してから現在、さらには未来に至るまでの歴史について書かれています。


ただ、この気の遠くなるような長い歴史を上下巻合わせて530ページ弱に収めているため、歴史(あるいは特定の歴史)を詳しく知りたいという方、または、歴史研究の最新情報を知りたいという方には少々物足りないかも知れません。英語版は2015年に出版されているため、実際にこの本が書かれたのはそこからさらに前、少なくとも今から5年以上前ということになるので、この本には記述されていない新しい発見もあるでしょう。


それでも、長い長いヒトの進化の歴史を将来の展望まで含めて網羅し、歴史に詳しくない素人の私にとっても理解しやすい言葉で解説しているという点では、教科書?として読むにはとても価値ある本ではないかと思います。


また個人的には、高校の世界史で学んだローマ時代(それ以外の時代はあまり記憶にない)、大学の人類学で学んだヨーロッパの帝国時代とイギリスの植民地支配、西インド諸島の歴史と文化、闘争で有名なアマゾンのヤノマミ族(Yanomami/Yanomamo)、メラネシアのビッグマン(big man)、グループ内およびグループ間の権力関係に関わる「交換システム」(system of exchange)、社会の中でお金として機能する貝殻やタバコ、ベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」(”Imagined Communities”)などなど、今まで別々に学んで得た知識が一つの線に繋がったような気がして、非常にワクワクするおもしろい歴史書でした。



始まり


ヒトとチンパンジーの最後の共通祖先が生きていたといわれているのが600万年前。その後、250万年前になると、アフリカではホモ属が進化し、石器を使ったとされる最初の痕跡が見つかります。


ホモ属に属するホモ・サピエンスですが、地球上の歴史でホモ属に属する生物は、ホモ・ネアンデルターレ(所謂ネアンデールタール人)、ホモ・エレクトス、ホモ・ルドルフェンシスなどもいたそうです。

しかし、現在まで生き残ったホモ属はホモ・サピエンスのみ。


それはなぜなのか。


この謎を解明するところから、本書は始まります。



3つの革命


ホモ・サピエンスの進化を語る上で重要なターニングポイントとなったのが「認知革命」、「農業革命」、そして「科学革命」だと著者は語っています。


特に重要なのが、7万年〜3万年前に新しい意思疎通の方法が登場したことで、人々は「虚構」つまり存在しない架空の物事について語ることができるようになり、さらにはその「虚構」を集団で共有することで巨大なネットワークを構築し膨大な数の見知らぬ者同士でも協力できるようになったとされる「認知革命」です。


これがなければ、その後の農業革命と科学革命も難しかったでしょう。


また、この「虚構」は認知革命の起きた時代にのみ重要な役割を果たしたわけではなく、今の私たちにとっては当たり前の国家、社会、文化、法律、規律、企業、団体、お金も全て虚構の上に成り立っていると、筆者は語ります。



進化したサピエンスは幸せになったのか


本書の一番の特徴と言っても過言ではないのが、私たちホモ・サピエンスは今までの進化を通して「幸せになったのか?」という問いを常に意識し、語っている点です。


人の言葉が目に見える形で残っていれば、幸せかどうかを語ることはできます。しかし、狩猟採集民族から農耕民族になったことで、当時の個人個人の生活が幸せになったのかというのは、難しい問題です。

歴史的発見から、農耕生活への変化が爆発的な人口増加に繋がったと言えたとしても(さらには、それがサピエンスという生物全体にとっての幸福だったと言えたとしても)、当時の一人一人の幸福度が、狩猟採集生活の時よりも上がったかは調べようがありません。それどころか筆者は、農耕生活は多くの人々を栄養失調、過酷労働、伝染病の蔓延に追いやったという見解を示しています(だから、農耕生活への進化は、ごく限られた一部の人を除いて、決して人を幸せにしたのではないと)。


しかし、だからといって、全ての進化や文明の発達が人々を不幸にしたかというと、そうではありません。過去数十年の間に乳幼児の死亡率は低下し、飢饉や疫病も激減、衛生面の改善は人々の生活をより快適にしました。


しかし、科学がどれだけ進歩しても、人々は決して満足することはありません。

技術の進歩で生活レベルが豊かになっても自殺する人たちは後を絶たず、その数は先進国ほど多くなっています。


そんなことを考えると、そもそも幸せとは?という疑問にぶち当たります。


この「幸福」を、筆者は生化学、心理学、自由主義、宗教(特に仏教)などの視点から考察し、こう述べています。


「…幸福の歴史に関して私たちが理解していることの全てが、実は間違っている可能性もある。ひょっとすると、期待が満たされるかどうかや、快い感情を味わえるかどうかは、たいして重要ではないのかもしれない。最大の問題は、自分の真の姿を見抜けるかどうかだ。古代の狩猟採集民や中世の農民よりも、現代人の方が真の自分を少しでもよく理解していることを示す証拠など存在するだろうか(下、p.240)」


そして、こうも続けてます。


「歴史書のほとんどは、偉大な思想家の考えや、戦士たちの勇敢さ、聖人たちの慈愛に満ちた行い、芸術家の創造性に注目する。彼らには、社会構造の形成と解体、帝国の勃興と滅亡、テクノロジーの発見と伝播についても、語るべきことが多々ある。だが彼らは、それらが各人の幸せや苦しみにどのような影響を与えたのかについては、何一つ言及していない。これは、人類の歴史理解にとって最大の欠落と言える。私たちは、この欠落を埋める努力を始めるべきだろう(下、p.240)」



超ホモ・サピエンス


本書の最後に筆者は、さらなる生物工学や情報工学の進歩によりホモ・サピエンスはホモ・サピエンスを超えた「超ホモ・サピエンス」へ向かっていくと語っています。

そして、これについて詳しく述べているのが、『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来(上・下)』という著書です。私たち、ホモ・サピエンスの未来についての物語です。


この本についても、いつかはブログに書ければと思っています。

こうして記録しないと、読んだ本の内容をすぐ忘れちゃうもんでね。

てへ。





作者: 昌

​韓国に来て早10年以上。いつかは仏様を描きながら世界中を旅するのが夢

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