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【書籍】『名画で読み解くイギリス王家12の物語』中野京子(著)〜結局印象に残るのは女王たち〜

最終更新: 2019年8月30日


オーストリア&スペインのハプスブルク家、フランスのブルボン家、ロシアのロマノフ家に続く『名画で読み解く』シリーズの第4弾、イギリス王家です。


本書は12の名画を中心に、1600年代からの約300年の歴史を、イギリスに君臨した3王朝とともに見ていきます。

内容も分かりやすくサクサクと読めるので、単純に、歴史の勉強になります。

1. ハンス・ホルバイン『大使たち』

2. アントニス・モル『メアリ一世像』

3. アイザック・オリバー『エリザベス一世の虹の肖像画』

4. ジョン・ギルバート『ジェイムズ王の前のガイ・フォークス』

5. ポール・ドラローシュ『チャールズ一世の遺体を見るクロムウェル』

6. ジョン・マイケル・ライト『チャールズ二世』

7. ウィリアム・ホガース『南海泡沫事件』

8. ウィリアム・ビーチー『ジョージ三世』

9. ウィリアム・ターナー『奴隷船』

10. フランツ・ヴィンターハルター『ヴィクトリアの家族』

11. フランツ・ヴィンターハルター『エドワード王子』

12. ジョン・ラヴェリ『バッキンガム宮殿のロイヤルファミリー』


① イングランド起源のテューダー朝(1485〜1603)

1337年から起きたフランスとの100年戦争に続き、イギリスではランカスター家とヨーク家による権力争い、所謂、薔薇戦争が勃発します。その中でも重要な戦闘と知られるボズワースの戦いにて、ヘンリーがヨーク家に勝利し、1485年に新王ヘンリー7世(イングランド&アイルランド王)として即位します。この時、王朝名もテューダーと改称し、5代目君主のエリザベス1世が亡くなる1603年までの計118年間、イギリスを治めました。


最後のエリザベス1世は「私はイギリスと結婚した」や「私のよき臣民、すべてが私の夫だ」という言葉通り、生涯独身を貫き、イギリスという国に全てを捧げたことで有名です。


しかし、跡継ぎがいなければ王家が途絶えるのは当然。テューダー朝はここで断絶してしまいます。


「我が子に王朝を継がせたいというのが並みの心情であるなら、自らの意思で王朝を閉じるという彼女の選択には凄みがある。立ったまま死んだという最後の伝説もうなずける(p.72)」という筆者の言葉がとても印象的です。


この他にもテューダー朝時代には、暴力的で残虐で横柄で、、、自分勝手な理由を背景にカトリックのバチカンと縁を切り、英国国教会を設立して強引な宗教改革を行ったヘンリー8世や、そのヘンリー8世と最初の妃であるキャサリンとの間にできた娘であり、容赦ないプロテスタントへの弾圧を行った「ブラッディ・メアリー(Bloody Mary)」ことメアリ1世もいて、大変個性豊かです。

すごく怖いけど。


②スコットランド起源のステュアート朝(1603〜1714)

エリザベス1世は、従姉妹でスコットランド女王だったメアリ・スチュアートの一人息子であるジェイムズを跡継ぎにするという遺言を残して亡くなりました。それに伴い、1603年にジェイムズ6世/1世(スコットランド王としては6世、イングランド&アイルランド王としては1世となる)が即位し、ステュアート朝が始まります。ここから7代目君主のアン女王が崩御する1714年までの111年間、イギリスを治めました。


このステュアート王朝時代は世界史の教科書で出てくるような事件も起こります。

2代目君主としてチャールズ1世が王位を継承すると、「王権は神から授けられたもので絶対であり、何者も侵すことはできない」とする王権神授説が行き過ぎ、議会と対立、1642年にはピューリタン革命(清教徒革命)が勃発し、チャールズ1世は処刑されます。ここで王政も廃止されますが、1660年には王政が復活し、チャールズ2世が即位することになります。


さて、ステュアート朝最後の君主であるアン女王はあまり有名ではありませんが(ってか、私は全く知らなかった)、彼女の時代には後世に影響する重要な出来事がいくつか起きています。


例えば、フランスとの間でスペイン継承戦争を起こしたり(結果フランスが勝利)、スコットランドとの合邦により最初のグレートブリテン王国(*)君主に君臨したりしました。また、現在のイギリス政治にも影響を与えている、主戦派ホイッグ(後の自由党)と和平派トーリー(後の保守党)という二大政党制が鮮明になったのもこの時代だそうです。


意外に重要な時代ですね〜。


(*)日本語でいうイギリスの正式名称は「グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」で、イングランド、ウェールズ、スコットランド、およびアイルランドで構成されています。これに対し、グレートブリテン(Great Britain)という名称はアイルランドを除く、イングランド、ウェールズ、スコットランドの3地域を合わせて呼ぶ際に使われます。


③ ドイツを起源とするハノーヴァー朝(1714〜1901)

アン女王が跡継ぎを残せなかったためにステュアート朝は断絶しますが、ステュアート朝ジェイムズ1世の苗裔である、ドイツ生まれのジョージ1世が1714年にグレートブリテン王国およびアイルランド王国の国王として戴冠します(ハノーヴァー家はドイツ北部の領邦君主の家系)。ここからハノーヴァー王朝が始まります。その後は世界各地を植民地化して大英帝国を繁栄させたヴィクトリア女王が崩御する1901年までの187年間、イギリスを治めました。

ここまで来ると近代史ですね〜。


この王朝の面白みの一つは、本書にある通り「ハノーヴァー家の伝統(?)は、女性がらみの不品行に加え、父親が跡継ぎの息子を極度に嫌うことだった(p.136)」という点でしょうか。本当に例外なく、国王が跡継ぎの王子を嫌います。

悲しいねぇ。


しかし、この時代はどの王も、暴力的で女好きで散財ばかりしているイメージでしたが、その中で異色を放っていたのがジョージ3世です。

彼は家庭を大事にし、真面目でインテリで読書好き。「三つも私的農場を持ち、森や畑を散歩して気さくに庶民に声をかけた。親しみを込めたあだ名は『農民ジョージ』(p.138)」とのこと。

なんだ、王としてはすっごい地味だけど、趣味はイギリス人っぽいし、なんか癒し系の王じゃないか〜。


しかし、そんなジョージ3世も、やはり息子のことは嫌っていたとか。

なんとまぁ……根深い問題だ。


さて、このハノーヴァー王朝最後の君主とされるヴィクトリア女王は、63年7ヶ月という治世の長さを誇ります。現在、その記録を更新しているのがエリザベス2世。

2019年8月現在93歳で、旦那さんのエディンバラ公フィリップ殿下も98歳ということで、夫婦そろって長生きですよね〜。


頑張れ〜、ベス!


本書は、このようなイギリスの歴史を、名画とともにおもしろ楽しく読み解くことができます。


全て読み終わっての印象は、やっぱりイギリス王朝は女王だ、ということ。

3つの王朝で国を大きく繁栄させたのは女王、そして、終わらせたのも女王。

そこがおもしろいです。


また、この『名画で読み解く』シリーズを通して、4つの王朝の歴史を見てきましたが、印象としてはハプスブルク家やブルボン家の方が圧倒的存在感で時代に君臨していたように思います(イギリスもすごいんですけどね。エリザベスとかヴィクトリア時代は特に。まあ、視点の問題かな。ロマノフ家は単純に怖い。ロシアの怖さ)。


しかし、歴史とは不思議なもんで、今でも王室が存在し世界に影響力を与えているのは、イギリス王室です。歴史の中で、他の名門3家は断絶してしまいました。


これが、「君臨すれども統治せず」の効能ですかね。


今でもイギリス王室は政治的中立の立場を貫いていますし、昔の王朝のように近親婚の繰り返しなんていうことはしないので、今後もしばらくは安泰ですかね。


最後に、、、。

この12個の絵の中で一番印象に残ったのは、フランツ・ヴィンターハルター『エドワード王子』です。


理由は、描かれているエドワード王子が可愛いから。


フランツ・ヴィンターハルターの絵画は、生きているような肌質と、魂が入っていそうな目力に特徴があるなという気がします。


あと、メインの12には入っていませんが、このカバーにも使われているポール・ドラローシュ『レディ・ジェーン・グレイの処刑』も印象的です。同じくポール作の『ロンドン塔の王子たち』も好きです。


ポール・ドラローシュもフランツ・ヴィンターハルターのように、何かを訴えているような生きた目を描くのが特徴的です。

あと、色の鮮明さが素敵。


あー実物観たいな〜。



作者: 昌

​韓国に来て早10年以上。いつかは仏様を描きながら世界中を旅するのが夢