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【書籍】『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』中野京子(著)〜西洋画と歴史のおもしろさにハマってしまう本〜

最終更新: 2019年9月18日



中野京子さんを初めて知ったのは、NHK BSで放送していた「『怖い絵』で人間を読む」という番組を見た時でした。


名画を「怖い」という視点から「読む」ことで新しい見方が生まれる、そんな内容になっており、中野さんが書いた「怖い絵」という書籍を基にして作られた特番だそうです。



ハプスブルグ家の肖像画やマリー・アントワネットの最後の姿など、その絵を描いた画家を含め、関わる人々の心情や社会的背景を読みながら絵を見ると、あらまぁ怖い怖い。


絵のタッチがどうだとか、光の表現具合がどうだとか、絵画の技術的な視点ではなく、あくまでもその時の歴史的背景を考慮に入れて見えてくる新たな一面。


「怖い」という感情は不思議なもんで、直接的に自分に関わるものでなければ、「怖いけど、もっと見たい」という感情が生まれてきます。


聖書やギリシャ神話、そして絵画の技術に関する知識がなければ、西洋画は理解するのが難しいと思っていましたが、こんなにおもしろい見方があったなんて。


もっと知りたいぞ〜!


ということで、購入しました。中野京子さんの著書。


『怖い絵』でも良かったのですが、番組を見て以降、ハプスブルク家とブルボン家の歴史が特に気になったので、以下の3冊を購入することにしました。


『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』


『名画で読み解くブルボン王朝12の物語』


『名画で読み解くロマノフ家12の物語』


その中で、今回は「ハプスブルク家12の物語」について書きたいと思います。



ハプスブルク家は言わずと知れた(と言いつつ、恥ずかしながら私は知らなかった)、ヨーロッパを強大な勢力で支配した名門王家です。


13世紀、スイス北東部の弱小豪族であったハプスブルク伯ルドルフが神聖ローマ皇帝ルドルフ一世として君臨して以降、20世紀初頭までの650年に渡り、オーストリアやスペインを中心にヨーロッパの広大な領土を支配しました(日本の徳川時代でも265年なので、650年ってすごいですよね)。

代々伝わる家訓である「戦争は他の者に任せておくがいい、幸いなるかなオーストリアよ、汝は結婚すべし!」(誰が言い始めたのかは不明)という言葉に従い、政略結婚で莫大な富と領土を獲得していったのです。


ハプスブルク家の中でも最も有名なのが、長年敵対していたブルボン家のルイ16世に嫁ぎ、最後はフランス革命の下でギロチンにかけられたマリー・アントワネットでしょう。

その他、マリー・アントワネットの母で、その巧みな政治力によって「国母」のイメージで敬愛された(肝っ玉母ちゃんという印象かしら)マリア・テレジアや、絶世の美女で悲劇のヒロインとして描かれることの多いエリザベート皇后などもいます。

また、ナポレオンの息子であるライヒシュタット公も3歳の時にウィーンへ連れてこられ、21年という短い人生のほとんどを軟禁状態に近い形でハプスブルク家で過ごすことになります(母親がハプスブルク家出身だったため)。


この本の面白い点は個性の強い人々の多様な人間模様が垣間見れるところで、あの人とこの人があそこで繋がっていたり(例えば、ライヒシュタット公と恋の噂があったゾフィはエリザベートの姑)、ここで人生を終えた人物が、その後別の形で歴史に影響を与えていたり(夫のフィリップ美公を慕うがあまり精神不安になり、彼が亡くなった後にはついに正気の糸が切れ、29歳から75歳で亡くなるまで幽閉されたフアナだが、長男カールを産んだことで、スペインハプスブルク家が世界帝国になるのを後押しをする)、なんていうことが読み取れることです。


個人的に好きだった物語&絵画は、エリザベート皇后でしょうか。

彼女の時代には既にカメラが発明されていたため、ネットで検索して彼女の写真を見ることができます。絵でしか描かれていないそれまでの時代とは違いますよね。

王族の肖像画を描く際には、美しく、そして逞ましく映るようにと、多少の修正は当たり前だったようですが、エリザベートは写真と全く一緒で、彼女は修正が必要ないほどに本当に美しかったということが手に取るように分かります。

ただ、それが余計に、彼女の人間としての存在感を強め、人生の寂しさを強調している気がしました。写真がなければ、マリー・アントワネットのようにおとぎ話の主人公という印象で終わっていただろうに……彼女が感じた孤独感や疎外感が、妙に現実的に感じてしまいます。


あとがきにあるように、


「何しろハプスブルクの人々は強烈に個性的で破天荒、たとえ運命の非情さに叩き潰されるとわかっていても、あくまで自分らしく戦い続け、破滅するにしても派手なこと、この上ない……歴史はやはり人物の面白さに尽きる……(p.205)」


という言葉の意味を、この本を読むと感じ取れると思います。

12の絵画とともに語られる12の物語。

サクッと楽しく読めるため、おすすめです。


最後に、この本の中で紹介されている12の絵画を紹介して終わりたいと思います。



1. アルブレヒト・デューラー 『マクシミリアン一世』

2. フランシスコ・プラディーリャ 『狂女フアナ』

3. ティツィアーノ・ヴィチェリオ 『カール五世騎馬像』

4. ティツィアーノ・ヴィチェリオ 『軍服姿のフェリペ皇太子』

5. エル・グレゴ 『オルガス伯の埋葬』

6. ディエゴ・ベラスケス 『ラス・メニーナス』

7. ジュゼッペ・アルチンボルド 『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』

8. アドルフ・メンツェル 『フリードリヒ大王のフルート・コンサート』

9. エリザベート・ヴィジェ=ルブラン 『マリー・アントワネットと子どもたち』

10. トーマス・ローレンス 『ローマ王(ライヒシュタット公)』

11. フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター 『エリザベート皇后』

12. エドゥアール・マネ 『マクシミリアンの処刑』



トーマス・ローレンスが描いたライヒシュタット公の肖像画は、生きているかのよう肌質と魂が入っているかのような静かだけれど力強い目が特徴的です。シンプルですが、最後まで印象に残っている絵です。


ぜひ、見てみてください。

ほかの名画もね。



作者: 昌

​韓国に来て早10年以上。いつかは仏様を描きながら世界中を旅するのが夢